就任のご挨拶

 令和6年4月、宮城教育大学の第15代学長に就任いたしました。皆様、何卒よろしくお願い申し上げます。 
 宮城教育大学は、仙台駅から地下鉄で10分足らずという便利な立地にありながら、青葉山というたいへん自然豊かな環境の中にあります。新緑や紅葉の季節には、キャンパスに居ながらにして素晴らしい景色を眺めたり、小鳥やセミなどの声を聴いたりしながら、学ぶことができます。
 本学は、東北地方における唯一の教員養成を目的とした単科の大学で、60年近い歴史を有しています。その間に、東北地方を中心としながら、数多くの優秀な学校教員を送り出してきています。お店に例えてみるならば、百貨店ではなくて、「教員養成」というジャンルに特化した「専門店」と言っても良いでしょう。
 こうした自然環境や小規模な大学であればこそ、学生同士や学生と教職員との間の距離が近く、アットホームな雰囲気の下で、他者と関わり合いながら学ぶことのできる場となっています。そうした中で、令和4年度から新しい教育学部に改組し、その前年には、大学院教育学研究科も専門職学位課程(教職大学院)に一本化して新しくスタートしています。教育学部においては、小学校(幼稚園も含む)、中学校?高等学校および特別支援学校という各校種の教員養成をフルセットとしてそろえています。また、中学校においては10教科、特別支援学校においては5領域での教員養成の堅持をめざしています。
 大学での学びは、高等学校までの「学習」という言葉に替えて「学修」という言葉が使われます。「学修」という言葉の中には、「自ら問いを見い出し主体的に学ぶ」とか「答えのない課題に対して多面的?多角的に探究する」「他者と協働しながら新たな価値を創造する」といった学びの姿が含まれています。その際には、人類が永きにわたって築き上げてきた学問や芸術?技術の体系について、正面から向き合い、じっくりと真剣に学び取っていって欲しいと思います。そのために、体系的?構造的なカリキュラムの提供とともに、学び合いやふれあいの場としての共同利用スペースの充実にも取り組んでいます。さらに、令和6年4月には新しい学生寮もオープンしましたし、今後、キャンパスアメニティの更なる向上をめざして学内の環境整備にも取り組んでいく予定です。
 本学の第4代学長である林竹二は、『開国』という書物の中で、授業とは「単なる知識の授受」に止まるものではなく、「子どもの内に何事かを惹き起こす営み」でなくてはならないと述べています。また、「授業の成立」や「授業への子どもの参加」は、決して自然発生的に生まれるものではなく、深い教材研究と子ども理解とによって「授業を厳しく組織する」という教師の役割がとても重要であることを強調しています。このように、子どもの成長著しい大事な時期に直に接し、教え、育てること、教師自身もまた子どもからの問いかけに応じて深化する、こうした人間と人間との関わり合いは他の職業にはない素晴らしいものです。そして、こうした教師と教え子との関わり合いは、授業という営みだけではなく、全人格的な側面に及んでいます。さらに、場合によっては、一生涯にわたって続く関わり合いとなることも少なくありません。
 自分もこうした教師になってみたいという気持ちを持っている人は、是非、宮城教育大学の扉をたたいてみてください。私たち教職員、先輩一同は、心からみなさんをお待ちしています。

令和6年4月
国立大学法人宮城教育大学長 松岡 尚敏